尾高忠明指揮 NHK交響楽団 5⽉公演:親密なアンサンブルの多幸感とパヌフニクの衝撃
総勢10人のN響メンバーがソリストとして出演した今回の公演。はい!このプログラムを、あえてゲストを呼ばずにN響メンバーのソリストでやることにした方、天才です!神!本当にありがとうございました。
N響メンバー同士の親密なアンサンブルの多幸感が溢れたところに、締めのダイナミックなパヌフニクに殴られて、もう感情と言葉がまとまらず大変でした。
概要
基本情報
- 2021年5月15日(土)開場 5:00pm 開演 6:00pm
- 場所:サントリーホール
- 指揮:尾高忠明
- チェロ:辻󠄀本 玲(ハイドン/N響チェロ首席奏者)
オーボエ:吉村結実(モーツァルト/N響オーボエ首席奏者)
クラリネット:伊藤 圭(モーツァルト/N響クラリネット首席奏者)
ファゴット:水谷上総(モーツァルト/N響ファゴット首席奏者)
ホルン:福川伸陽(モーツァルト/N響ホルン首席奏者)
ハープ:早川りさこ(ドビュッシー/N響ハープ奏者)
トランペット:菊本和昭、長谷川智之、安藤友樹、山本英司(パヌフニク/N響トランペット・セクション) - コンサートマスター:白井 圭
曲目
- ハイドン/チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 作品101 Hob.VIIb-2
- モーツァルト/4つの管楽器と管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K. 297b
- ドビュッシー/神聖な舞曲と世俗的な舞曲
- パヌフニク/交響曲 第3番「神聖な交響曲」
その他
ホールに入るとまず聴こえてきたのがハープの音。早川さんが念入りにチューニングされていました。インタビュー動画(下記リンク)でも拝見しましたが、ハープってチューニングがとても大変な楽器なのですね。でもチューニングですら美しいのは素敵。
ハイドン/チェロ協奏曲 第2番 ニ長調 作品101 Hob.VIIb-2
小走りでステージに上がるソリストの辻本さん。やんちゃ感満載で可愛かったです(笑)
演奏の方は、辻本さんの豊かでハリのある音がとっても素敵でした。オケとのやり取りもさすがの上手さで、しかも楽しそうに弾くものだから、聴いていて・見ていて自然と頬が緩みます。
ぶらあぼの対談でお話しされていたカデンツァは、超絶技巧よりもメロディアスにたっぷりうたう感じで素晴らしかったです。とても好みでした。
モーツァルト/4つの管楽器と管弦楽のための協奏交響曲 変ホ長調 K. 297b
まずですね、吉村さんのドレス姿が可愛すぎでしたね……心の中で拝みました。
両手に花!
— 吉村結実 (@yyhautbois) 2021年5月17日
2日とも客席を温めて下さったFg佐藤さんとスパルタメイク指導のFl梶川さん🤣そしてプロ級ヘアセットをして下さったCb矢内さんと本日某所にて📷 pic.twitter.com/YY5hnQcOgK
4人のソリストが登場したこの曲。N響メンバー同士の親密なアンサンブルを目の当たりにして、多幸感が溢れました。本当に幸福な時間で、音楽を聴いてこんな気持ちになるとは……
特に、ホルンの福川さんがとにかくチャーミングですきになっちゃいますね。ソリストとだけでなく、オケとも目線で会話していてとても素敵でした。ちょっと意外(?)だったのは、ヴィオラ首席の佐々木亮さんとよくアイコンタクトを取りながら演奏していたこと。あまりお二人のイメージがなかったので、おお!と思いいつつ、とにかく楽しそうな福川さんに癒されました。そして水谷さんとはもはや見つめ合っていましたね。尊いです、とても。
もうひとつ印象的だったのは、ファゴットの水谷さん。1月のブランデンブルク協奏曲のときも思いましたが、水谷さん立奏だと結構ノリノリなんですよね。しゅっとしているのでとても様になっています。演奏の方も、水谷さんがオケからバトンを受け取って、ソリストたちにすっと渡す様子がとっても格好良かったです。
正直モーツァルトはすこし苦手だから、30分もモーツァルトか……と思っていました、すみませんでした、嘘です永遠に聴いていたかったです。
ドビュッシー/神聖な舞曲と世俗的な舞曲
ソリストはハープの早川りさこさん。
美しさを極めた弦の響きに、これまた美しいハープの音色が浮かぶ圧倒的美の時間でした。ハープと弦楽のみの、小編成ならではの繊細なダイナミクスが素晴らしかったです。
今回は2階席だったので、インタビューで話題になっていた足捌きもよく見えました。普段はあまり見えないので知りませんでしたが、とても複雑なことをやっているんですね……。でもばたばたしているように見えず、とても優雅でした。
パヌフニク/交響曲 第3番「神聖な交響曲」
舞台の四隅に立ったトランペットのファンファーレから始まるこの曲。ホールいっぱいに響き渡る輝かしいサウンドにはっとさせられます。四隅に立つことで、音が立体的に聴こえて面白かったです。
そこからガラッと雰囲気が変わって、繊細で緊張感のある弦楽合奏が始まったかと思えば、唐突に迫力のあるティンパニの音でまたどきっとさせらます。
そして終楽章、祈りを囁くような弦の音に耳をそばだてていると、トロンボーンの和音を背景にフルート首席の神田さんのソロがふっと聴こえ、その圧倒的な透明感と清涼感に驚きました(この曲では驚いてばかりですね……)。
フィナーレでは、冒頭のファンファーレの再現にオケの響きが重なって迫力満点。尾高さんが振るときの、あの地の底から湧いてくるような凄まじいフォルテはなんなのでしょうね、いつもビビり散らかして目から水が出てしまいます。今回も例に漏れず目から水が出ました……。
演奏後、トランペットセクションの4人が前に集合したときの安心したような笑顔が最高でした。最後まで尊い演奏会です。
[本日(5/15)のソリスト]
— NHK交響楽団 NHK Symphony Orchestra, Tokyo (@NHKSO_Tokyo) 2021年5月15日
チェロ:#辻󠄀本玲 @reicellocello
オーボエ:#吉村結実 @yyhautbois
クラリネット:#伊藤圭
ファゴット:#水谷上総
ホルン:#福川伸陽 @Rhapsodyinhorn
ハープ:#早川りさこ
トランペット:#菊本和昭 @kikumotrumpet#長谷川智之 @TomoyukiTp#安藤友樹#山本英司 pic.twitter.com/K7Xysp62sE
いやあこれ、ソリストをN響メンバーでやるの本当に最高すぎましたね、あまりの尊さに気絶しかけました。冒頭でも書きましたが、この企画を考えた方、本当に天才だと思います。
尾高さんの指揮というのがこれまたよかった!安心感、安定感があって、真剣なんだけど、どこかお茶目で余裕がある。楽団員も安心して演奏している感じがして、圧倒的実家感を感じました。
私はいつもN響が好きでコンサートに行っているので、 正直、ゲスト奏者とのコンチェルトよりも、メインの曲を楽しみにしているところがありました。そんな自分にとって、今回のプログラムは本当に楽しいものでした。ぜひこれからもこういった企画をやってほしいですね。