バッティストーニ指揮 東フィル サマーミューザ公演 :情熱のイタリア音楽に沸き立つ一夜

 バッティストーニさんと東フィルのコンビでイタリア音楽、それだけ間違いない、と思いチケットを取りましたが、実際は想像以上の楽しさでこの夏一番テンションが上がったと言っても過言ではない、最高の一夜でした。

 

概要

 

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基本情報

曲目

  

 その他

 メインのローマの松の迫力を間近で感じたいと思い、ステージに近い座席を取ってみました。結果大正解。今回のサマーミューザ期間でいろいろな席を試してみて、大体自分の好みの座席が分かりました。需要ないかもしれませんが、余力があるときに、座席の特徴まとめとか書いてみようかしら。 

 また、今回は開演前に20分ほどバッティストーニさんのプレトークがありました。映像配信もあるので詳細は書きませんが、色々と曲にまつわるお話しを聞けて面白かったです。にわかなのでバッティストーニさんのことはあまり知らず、勝手にとても情熱的なイメージを持っていたのですが、プレトークはわりと普通(?)で、落ち着いた紳士という感じ。英語も聞き取りやすいし、丁寧にお話するお姿がとっても好印象。「俺のイタリア音楽を聴け!」という勝手なイメージを抱いていましたが、プレトークを聞いた後のイメージは「本物のイタリア音楽を聴かせてあげるよ」に変わりました(あまり変わってない?)。

 

ヴェルディ:歌劇「シチリア島の夕べの祈り」 から 序曲

 はい、もう初っ端からめちゃくちゃたのしい!!!!!ひとことで言えば鮮烈。バッティストーニさんは暗譜で、もうこの曲は俺のものって感じでした。静かな冒頭の後、アレグロに入ったところから、結構バッティストーニさんの雄叫びが聞こえてびびりましたが、すぐに慣れました。指揮者の声や息遣いが聞こえるのは、ステージ近くで聴く醍醐味でもありますよね。鋭い視線の迫力も凄まじくて痺れました。

 私が東フィルさんの演奏を聴くのは2回目なんですけど、前回は平日午後のコンサートで映画音楽特集だったんですね。その内容のせいか、座席(ステージから遠かった)のせいか、東フィルさんは上手くてソツがないけど、あんまり面白くないかも?という印象でした。が、今回で印象が全く変わりましたね、めちゃくちゃ面白いです、すみませんでした。

 

レスピーギ組曲シバの女王ベルキス」

 続いてレスピーギの「シバの女王ベルキス」。全4曲の組曲で、今回は第2曲と第3曲を入れ替えて演奏されました。この順番入れ替え、演奏上の効果のため、などと言われていますが、自分はいまいちピンと来ていません……。緩-緩-急-急よりも緩-急-緩-急の方が良いということなのでしょうか?まあ後で詳しく調べてみます

 この曲で印象的だったのは第1曲と第2曲での斎藤和志さんによるフルートソロ。どちらもエキゾチックな旋律なのですが、第1曲は明るくはっきりした音で、第2曲は柔らかく雰囲気のある音で吹かれていたんですよね。これはおそらく、第1曲はソロモン王の音楽で、第2曲はベルキスの音楽だからですよね。この吹き分けが出来るのが素晴らしいな、と感動しておりました(フルート超初心者の戯れ言すみません)。

 第4曲では「狂宴の踊り」という言葉のとおり、それはもう熱狂的な盛り上がりでした。音の圧も凄まじく、テンションが上がらざるを得ない!フィナーレで、バッティストーニさんがジャンプ、そして着地と同時に金管のファンファーレがビシッと決まったのが格好よすぎでした!芸術点も高いですね。10点!10点!10点!


 前半でこの盛り上がり、最後のローマの松はどうなってしまうのかしら、と思ってしまいましたね。おそらく現地にいらした方は同じことを考えていたのではないでしょうか。

 

ニーノ・ロータ:ハープ協奏曲

 休憩後1曲目のハープ協奏曲は癒しでした。予習が間に合わず、本番で初めて聴いたのですが、とてもチャーミングな曲調で楽しく聴けました。
 他のプログラムに比べると落ち着いた曲調ですが、後から思うと、ここで一息つけたのは結果的によかったです。絶妙なプログラミングでしたね。

 そして、吉野さんのソリストアンコール(M.トゥルニエ:演奏会用練習曲『朝に』)がこれまた素晴らしかった。ハープの独奏を初めて生で聴いたのですが、こんなに広がりのある響きがするとは存じ上げませんでした。途中、他の楽器(フルートやヴァイオリン?)のような音が聞こえて辺りを思わず見回してしいましたが、これがハープの音なのですね。すごい楽器だ……

 

レスピーギ交響詩「ローマの松」

 さてお楽しみの「ローマの松」。もうね、こういうローマの松が聴きたかった!というどストライクの演奏でした。大好きな曲ですし、盛り上がるのは知ってたけどこれまでとは。圧巻の演奏でございました。
 第1曲「ボルゲーゼ荘の松」。始まりからきらきらしたイタリアの日差しが見えるような、輝かしいオープニング。快速で始まり、ちょっと木管がつんのめっている感じもありましたが、この曲はこのスピードで行くのだ、というバッティストーニの確固たる棒さばきにより全力で進んでいく様子は迫力がありました。

 第2曲「カタコンベ付近の松」では一転、荘厳な雰囲気に。トランペットバンダはバックステージから。弦の囁きがよく聴こえて面白かったです。こういうハーモニーだったのね、と新たな発見がありました。

 そして第3曲「ジャニコロの松」。フィナーレの迫力も凄まじかったのですが、実はここが一番印象に残っています。まずベヴェラリさんのクラリネットソロが絶品。月夜にひとり佇む淡い寂寥と美しさが一音一音から伝わってきました。ベヴェラリさんは、バッティストーニさんと同じイタリア・ヴェローナのご出身なのですね。もう何というか、この旋律のことはすべて分かってる、という感じがしました。また、クラリネットソロを支える、弱音器をつけた弦も、薄いヴェールのように繊細で美しく、これまた絶品でした。そして、このあとのクレッシェンドとディミヌエンドを繰り返しながらすこしづつ盛り上がっていく部分のなんとまあ官能的なことか。あんなに大人な雰囲気のある松は初めて聴きました……。あんまり書くと下品になってしまうのであれなのですが、最後の鳥の鳴き声を聴いて、「あ、これ朝チュンだったんだ」って思いましたもんね。
 その甘く淡い夢が醒めるぎりぎりのタイミングで始まる第4曲「アッピア街道の松」。絶妙です。嫌でも盛り上がるこの曲ですが、この日はとんでもない盛り上がりでした。ffはもうこれが限界ではと思うところから、さらに3段階ぐらい大きくなって、あまりの音の圧に倒れそうでした。最後はホールが音で破裂するのではないか、と思うぐらい。もうこのエネルギーを浴びたら満腹・大満足、何も言うことはありません。

 

 終演後も大熱演に拍手が収まらず、ソロカーテンコールがありました。最後はコンサートマスターの近藤さんを呼び、指揮棒と弓を交わす仕草も。このタイプの握手代わりの仕草、初めて見ましたが、魔法使いみたいで格好良いですね。素敵。

  ありがたいことに配信があるので、8月31日の視聴期限まで観倒したいと思います(本記事はあえて配信を見返さずに現場の感想だけで書いたので、間違っているところもあるかもしれません……)。ご興味のある方は下記ご参照くださいませ。

 

muza.pia.jp